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コメント(五十音順)


実際の人の死にカメラを向けているのに、こんなにも嫌味がなく、むしろ清々しさや愛おしさが残るのは後にも先にもこの作品だけであろう。身内だからこそ撮れたというだけではない、映画への敬意とあくなき探求心が生んだ唯一無二の作品。在宅での介護や医療に携わる専門職はもちろん、あらゆる人が観て、「家族」というもっとも身近な「生」を感じてほしい。
我妻和樹
(映像作家/みやぎシネマクラドル代表)
父親の最後の日々であり、母親にとっては在宅看護・介護の日々でもあった40日余りを、長男である村上浩康監督は「家族の立場」と「映像作家の立場」で記録し続けた。そこでは、終わりゆくいのちの営みが、家、家族、地域との繋がり、そして関わるケア提供者たちの実践とともに展開されている。
このような最期の時間の記録は、日常を、人のあり様を、そのまま映し出してくれ、在宅ケアの実際を知るには最上の教材となるに違いない。在宅ケアを理解するにも、人が亡くなっていく過程を理解するにも、是非見てもらいたい作品と思う。
秋山正子
(訪問看護師/株式会社ケアーズ白十字訪問看護ステーション統括所長/認定NPO法人マギーズ東京共同代表・センター長)
最新作の『あなたのおみとり』によって、村上浩康というドキュメンタリー作家が新たな領域に踏み入ったことは間違いないだろう。
だがこの映画は、これまでの村上作品がまとってきたキャメラの優れた即物性を裏切ることも決してない。人間の死を真正面から扱いながら、湿っぽい感情を催させることなしに生き物の厳然たる生を感じさせるという意味では、実はこれまでの村上作品に真っすぐ連なる一本でもある。
岡田秀則
(国立映画アーカイブ主任研究員)
この映画は私が在宅診療医として過ごした20年間に社会に対して訴えたかったことの約90%を判りやすい映像で描きだしている。私が仮に独裁的な厚生労働大臣であったなら全国民に、少なくとも1回この映画を観ることを義務化するであろう。