数年前に実父を病院で看取りました。父は死を非常に怖がっていて、がん末期を告知された時に、終活ノートについて触れると、「早く死ねということか」と怒鳴るくらいで、だれも何も言えず、ただ時間が過ぎていきました。本人も私以外の家族も、一時帰宅や在宅での看取りを想像もしていませんでした。知識も自信もなく、また本人は何かあったらという不安が強かったためです。 主治医から「自宅に帰るなら今が最期のチャンス」と勧められても、本人も家族も動きませんでした。最終的には、主治医から医療職の私に直接勧められ、1週間後の一泊の一時帰宅のため、昼休みは電話をかけまくり、在宅酸素や介護タクシー、訪問看護や万が一の時の訪問診療を手配しました。大変だったにもかかわらず、家族からも本人からも文句ばかりで、心の中では正直やらなければよかったと後悔しました。でもその3週間後、本人の希望で家族が手配し、もう一泊外泊することができました。外泊から1か月過ぎたころ、意識レベルが低下しました。今まで父にケアを拒否されてきた看護師たちと結託し、毎日仕事から早退して一緒に清拭を行いました。一緒に口腔ケアをし、伸び放題の髭をそり、院内の理髪店に来てもらって、散髪もしました。亡くなった時には、父の体はピカピカでした。私の職場の理解もあり、また病棟のすばらしいナースたちの協力や配慮もあって、院内の看取りではありましたが、私には「やり切った」というすがすがしい思いが今もあります。 主治医の先生、病棟の看護師の皆さんには、本当に感謝しています。当時の父が想像できなかった在宅での看取りを、この「あなたのおみとり」という映画は、イメージして選択肢の1つにする助けとなると思います。
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